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  • 昔「いい先生」だった「この人!」 インタビュー
ベンチャー企業経営者トップインタビュー
昔「いい先生」だった「この人!」

ベンチャー経営者や、社会で重要な役割を担っている人達のなかに、学生の頃に家庭教師や塾の講師をしていた経験を持つ人は多い。そのような人達に対して、シリーズでお話をうかがっていきます。
また、このシリーズは、特に大学生の方に読んでいただくことを念頭にして構成をしております。

取材・執筆:「いい先生ねっと」先生紹介センター代表 寺田貴久子

阪神淡路大震災で
   400人の生徒の安否を確かめる

● 株式会社アルトビジョン 代表取締役社長 椎葉宏(しいばひろし)氏
関西の塾で、毎年約400人の生徒を教えていた椎葉氏が、京都大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に就職し、そののち起業するまでの現在までの歩みを取材。
( Mobile2.0 ポストWeb2.0時代のケータイビジネス (インプレスジャパン)を2006年8月に出版。)

椎葉氏のプロフィール
88年 大阪大学 工学部 土木工学科 入学。
理系のなかでも「人と接する」部分のある学問を研究したいと考えていた。 数百年単位で実績が残る道路・トンネル・橋などの大勢の人が使用する公共 の構造物を研究出来る土木工学科を専攻。 しかし国内の構造物にはデザイン要素も少なく、いかに堅牢につくるかを計算 機と向き合いながら考えていく世界。またゼネコン体質を知るにつれ、自分の 創造力の入り込む余地の少ない業界であることにも気づき、自発的に中退する。
92年 京都大学 経済学部 経済学科 入学。
もともと経済学に興味があり、「人と人とのつながり」の多い学問だと思い、経済学科を専攻する。96年3月に卒業。
96年 アクセンチュア(旧アンダーセンコンサルティング) 入社。
戦略グループコンサルタントに所属。
99年 ネットエイジ へ転職。
アンダーセン時代の後輩、 松山太河氏 に声をかけられたのをきっかけに、ネットエイジへ転職。ネットエイジは98年2月の創業以来、8つのビジネスを事業化し、独立会社化、あるいは事業売却しているインキュベーションビジネスを展開する会社である。またネットエイジは「BitValley」「BitStyle」 という東京都渋谷区を中心にしたベンチャー活動の活性化を支援するためのイベントを仕掛けた会社である。

「あの頃のベンチャーブームに乗って転職したわけではない。僕が転職した頃のネットエイジは誰も知らない全く無名の会社だった。転職の動機ですか?それは、特定のドメイン(領域)のビジネスではなく、複数の会社のビジネスを覗いてみたいと思ったから。それにプロジェクトを一から立ち上げるのなら、既存のビジネスではなく新しいインターネット業界で自分の可能性を試したいとも思ったから。」
00年 アルトビジョン を設立。
ネットエイジからのVmailの事業譲渡と同時に、ネットエイジにおいてVmailプロジェクトを進めていたメンバーが移籍し、株式会社アルトビジョンを設立。プロジェクトリーダーだった椎葉氏は、代表取締役社長に就任。従業員10人足らずで、ゼロからスタートした会社の初年度売上は、今や確実に1億円を超えるという。


<目次>
・ 阪神淡路大震災でのこと
・ 一流企業から無名ベンチャーへの転職
・ ベンチャーに向く人、向かない人
・ インターンシップについて
・ 大学生へのアドバイス



阪神淡路大震災の時、3日間かけて、約400人の生徒宅へ安否確認の電話をする。
───大学生の時、塾や家庭教師のアルバイトをされていたそうですね。

はい。約7年間、塾や家庭教師の先生をしていました。神戸や大阪に教室 がある、灘中への合格者数がその頃8年連続No.1だった塾で、主に小学生の受験 算数をメインに教えていました。週4日夕方から23時頃まで塾で過ごし、日曜日 は家庭教師として3軒まわる、といったペースでした。

塾のアルバイトをしていた7年間、遅刻は0回でした。その塾では授業時間外 でも、生徒が先生へ自由に質問できるようなシステムだったので、授業開始30分 前には出勤し、それにこたえるようにしていました。

───塾の場合、授業時間外の指導は先生の時給にカウントしないところが多いですよね。

ええ、そうですが、先生の時給は、塾側の評価点以外に、生徒からの評価によってもプラスされていくので、時間による給与はつかないけれど、評価による給与がつけばそれでいいかなと。

───生徒からのアンケートをとって先生の時給に反映する塾だったのですね。 ちなみに時給はあがりましたか?

最初2500円からスタートした時給が、6ヶ月で8100円になりました。

───6ヶ月ということは、受験で結果が出たかどうかがわかる前ですよね。

僕の場合は、生徒からの評価がパーフェクトでした。教え方がうまい、と。 またどの先生もおさえることの出来ない「やんちゃ」な生徒が多い教室があった のですが、僕が担当してからのその教室からの評価も全員最高点をつけてくれま した。

───「いい先生ねっと」も先生への評価システムを作り、教え方がわかりやすいと定評のある先生には、どんどん時給をあげていきます。先生の質の確保を重視した運営をしていきますがその話は参考になります。


───ところで、95年の阪神淡路大震災の時は関西にいらっしゃったのですか?

はい。神戸三宮の教室など、1クラス50人から60人のところを8クラス受け持 っていました。震災のあとは固定電話が使えず、自分の携帯や公衆電話から、寒 いなか、約400人の生徒宅へ安否確認の電話をかけつづけ、最後の生徒が確認でき るまで丸3日間かかりました。そのあと約半年間ほど、電車が使えなかったので、 京大の授業が終わったあと、3時間ほどかけてバスで塾まで通う毎日でしたが、 結構大変でしたね。

───椎葉さんの責任感の強さがうかがえるエピソードですが、アルバイトを通して自分にとってためになった出来事はありますか?

92年に、バイトをしていた塾の学園長に引っ張られて、別の新たな塾を作った ことがありました。机の運び出しから生徒の勧誘まで、塾をゼロから立ち上げる 体験をしました。

───起業の疑似体験をそこでしたわけですね。

まわりの先生や生徒など、みんな大学卒業後もそのままその塾に就職すると思 ってたんじゃないでしょうか。
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一流企業から無名ベンチャーへの転職
───大学卒業後、(コンサルタント大手の)アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に就職なさいましたね。アンダーセンのなかでも、戦略グループコンサルタ ントは、特に優秀な人が集まる部署と聞いてますが、ちなみに同期入社のなかで、 戦略グループに所属になった人は何%ぐらいでしたか?

同期入社が100人から150人ぐらいいた記憶がありますが、そのうち、戦略グル ープへの所属は8%でした。システムチームを経てから異動になったのですが、 そこでトップマネジメントから組織をつくったり、業務プロセスを変えていくな どのコンサルティングをしました。

───アンダーセンからネットエイジに転職すると言った時のまわりの方の反応 はいかがでしたか?

みんな、全くわからん、と(笑)。上司や同僚は、クライアントや競合に行くの なら、まだ少しは理解できるけれど、ベンチャーに行くなんて理解できない、と いう反応でしたね。

───(笑)では、大企業からベンチャーに転職して、得たもの、失ったものは?

得たものは、人脈ですね。今でもその頃知りあった人脈が仕事に生きてますから。 大変だったのは、会社のネームバリューがなかったことかな。あとネットエイジに 入った最初の頃、ネットディーラーズやYahoo自動車の立ち上げプロジェクトにかか わったのですが、営業に行く先の自動車販売会社の人達がYahooを知らなくて、説明 が大変でしたね。

───なるほど。インターネットはなんぞや、から説明する必要があったと。

まあそれはそれで楽しかったとも言えるんですが。
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ベンチャーに向く人、向かない人
───ところで、ベンチャーに向く人、向かない人ってあると思いますか?

ありますね。ベンチャーの場合、その会社がどこに向かおうとしているのか、 常に同じレベルで共有できる人で、連帯感のある人でないとズレてしまいますね。 また自分で仕事をつくる人がいいですね。決められた仕事だけをやる人では難し いですね。逆に、大企業に勤めている人の与えられた仕事をとても丁寧にキチン とこなしていくところは、ベンチャーにいる人達も見習わなくてはなりませんが。

時々大企業で“独創性のある人材求む”みたいな募集があったりしますが、本 当かな?と思いますね。100人、150人単位のプロジェクトの多い企業であれば、 まず協調性こそ必要とされることでしょう。長期的な利益を追求する会社のなか で、アイディアに富んだ一人だけ突出した人間がいれば、はみ出してしまいます よね。ベンチャーと違って、10年、20年単位のスパンでじっくり研究に取り組め るというところこそ、大企業のいいところだと思います。
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インターンシップについて
───最近、 インターンシップ ※ を導入する企業が増えてますが、インターンシップはどのように導入すれば、企業にとっても学生にとってもプラスになると思 いますか?

インターンシップより、労働対価が発生するアルバイトのほうがいいと思いま すね。時間に対する意識が出てきますし、一人の人にたまった経験をまわりの人 にアウトプットして共有するのに、最低半年間は必要だと思ってるんで、当社は 半年以上レギュラーで勤められる人でないと採用しないですね。

───なるほど。 ナレッジマネジメント ※ に少なくとも半年必要ということですね。御社には大学院生のアルバイトがいらっしゃいますよね。時給ですか?


基本的には時給ですが、会社にいた分の時間を請求させるわけではありません。 この仕事は何時間で出来る仕事だよね、という確認をします。早く仕事のこなせ る人と同じ仕事でも時間のかかる人とが同じ対価だったらおかしいですよね。 徹底した時間管理に対する意識は、アンダーセン時代に鍛えられました。

───それはすごい。社員がどの人にどのぐらいのボリュームの仕事を振っていて、それがどの程度の時間のかかる仕事なのかを社長が細かく把握しているとい うことですね。

※ インターンシップ=企業が学生に就業体験の機会を提供する制度。
※ ナレッジマネジメント=社員1人1人が持っているノウハウや知識(ナレッジ)を会社全体で共有していく仕組み。
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大学生へのアドバイス
───最後に、人生の岐路にたっている大学3・4年生に何かアドバイスをお願 いします。

大学生のうちはいろんなアルバイトの経験をしたほうがいいと思いますね。ひ とつのバイトで効率的に稼ごうと思うことより、自分の弱点を補うようなバイト、 例えば、人と接するのが苦手だと思ったら、わざと客商売をしてみる、とか、お 勧めしますね。多分野を経験することで、ポートフォリオ的に自分を良くしてい く努力をするなど、学生のうちに様々な経験をしてほしいと思います。

───どうも有難うございました。
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椎葉宏氏が代表取締役社長を務めるアルトビジョンは、「Vmail」という個人ユーザ向けのサービスや、メール配信代行、E-mailマーケティングなどの企業向けコンサルティングを主な事業内容としている。Vmailは、1999年に米国で注目されたオプトインサービスというビジネスモデルをベースにしたインターネット上のサービス。「オプトイン」メールは、ユーザが登録する際のプロフィールや趣味嗜好をデータベース化しているため、広告主が告知を行いたいユーザへ、ターゲットを絞って効率的にメールを配信することが可能なサービスである。 ちなみに、Vmailの「V」には、消費者が自分の意志に基づいて(Voluntary)選択した項目に関して、価値(Value)ある情報を提供する、という意味が込められている。
● 取材を終えて
1_2.jpg 取材中、「10年先、20年先の計画がたてられる人って尊敬しますね。」と屈託 なく笑う。椎葉さんには、若手経営者にありがちな大風呂敷をひろげるところ がいっさいなく、「一歩先を見据えて、今までの結果を着実に積み重ねていく」 その堅実さはネット業界内でも定評がある。社内のメールもほとんど“all”(宛先が全社員)で流すというフラットな組織 づくりを心がけているよう。
プライベートでは、松浦怜子さんとの電撃結婚で時の人。経営者になると痩せていく人が多いなか、「昔買ったスーツがやばい。」というほど最近太ったとか。公私共にすごく充実しているようでした。


mail 椎葉氏へのお問い合わせ
本人や会社への直接のお問い合わせはご迷惑がかかりますのでご遠慮ください。もしお問い合わせがある場合には、当社経由でメールを転送させていただきます。ただし返事は差し上げかねますし、その反応についてのお問い合わせもご遠慮ください。また内容によっては、転送しないこともありますので、予めご了承下さい。
※ メールの件名に「株式会社アルトビジョン 椎葉様」と明記のうえ、story@11sensei.net までお送りください。
2001.09.12 米同時テロ事件の翌日、銀座1丁目のcafe Wanofuにてインタビュー。
取材・執筆:「いい先生ねっと」先生紹介センター代表 寺田貴久子



<次回インタビュー予告>

東北大学・東京工業大学大学院卒業後、日本HPへ就職、現在、 テックファーム株式会社 の取締役副社長である小林 正興氏を取材します。 大学生の時に家庭教師をしたときのエピソードや、日本HPからハイパーネットというネットベンチャーへの転職、その会社の倒産を経て、現在のテックファームを興されるに至った経緯などもあわせておうかがいします。2002年1月下旬に掲載予定です。
第1回目インタビュー
椎葉宏氏
株式会社アルトビジョン
代表取締役社長
椎葉宏氏
SHIIBA Hiroshi

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